インタビュー プリントパック 西原佳さん
2019年08月22日[インタビュー]
ボート競技のアスリートである西原佳さんは、東北大学在学中の2018年にU-23日本代表に選出され、同年インドネシアで行われたアジア大会で4位入賞。
2019年の全日本選手権では2位入賞と、着実に力と実績を伸ばしている選手です。
現在、2020年の東京オリンピックの代表入りを目指してトレーニングを重ねる彼女ですが、実は当社プリントパックの社員でもあるのです。
一般的に企業に所属するアスリートは、企業チームに所属して競技に励むことが多いのですが、プリントパックにはそのようなチームは存在しません。西原さんは、ひとりの社員として日々の業務に取り組みながら会社のサポートを受けてアスリートとしての活動を行っているのです。この会社と社員アスリートの関係はどのようにして生まれたのでしょうか?また、2020年を見据える西原さんの夢とはどのようなものなのでしょうか。
一致団結して目標に向かう姿勢に共感してボートの道へ
―はじめに、西原さんがボート競技を始められたきっかけを教えていただけますか?
西原:大学に入るまではボート競技のことは全く知りませんでした。新入生歓迎会でボート部をたまたま訪れたのがきっかけです。その時、ボート部の先輩方が「日本一」という高い目標を掲げて一丸となって競技に向き合っている姿がとても印象的で、その姿に憧れるような形で入部を決意しました。
そのように目標の高いサークルですから、当然練習もハードです。
私は実家から大学に通っていたのですが、いつの間にかダム湖のほとりにある合宿所で週4日は泊まりがけの生活になっていました。そのおかげで、2016年には先輩との2人乗りのボートで全国6位という好成績を収めることができましたし、2018年のU-23日本代表、そして今の競技者としての私があると思っています。
就職か競技かで悩んだ時に、背中を押してくれたプリントパック
―大学時代から優れた成績を収めていた西原さんが、なぜプリントパックに就職したのですか?
西原:それはプリントパックの方々にかけていただいた言葉と、その姿勢に共感したからです。卒業を控えた時期、私はこのまま競技を続けていくか、それとも就職すべきか、答えの出ないまま就職活動を行っていました。
そんな時に合同説明会で出合ったのがプリントパックでした。
初めはただ業務に興味を持って選考に参加していたのですが、人事部の方と面談をすることになった時に「悩んでいることや、迷っていることがあれば正直に話してほしい」と声をかけていただきました。
それまで、企業の方に自分の抱えている悩みを打ち明けることなど考えもしなかったのですが、プリントパックの人事部の方には素直に今の思いを話すことができました。
普通であれば、選考に来ている学生が「就職すべきか悩んでいる」と話したら、人事部の担当者は不愉快に感じることでしょう。それなのに「よく言ってくれた」と受け止めてくださいました。
その後選考は進み、社長面談となった時にも、私は同じ悩みを打ち明けました。その時、なんと社長は「それならウチで漕いだらどうだ」と言ってくださいました。本当に信じられませんでした。競技だけでも就職だけでもない、その両方を叶えるという第三の道が自分の前に突然拓けたのですから。
この後押しがきっかけで私は就職を決意したのですが、プリントパックにはボート部はありません。そのため内定後、半年をかけて話し合いを続け、競技を行うための環境・資金・設備・道具などをどのように揃えていくかを決定していきました。
たった半年です。この短い時間で、ゼロから競技に必要なすべてのサポートを整え、私の想いを尊重して、すごい勢いで形にしてくださいました。会社のみなさんには本当に感謝しかありません。
一丸となる姿勢が大学時代のボート部と重なった!
―競技者を続けながら、企業でも勤務しているということですが現在はどういったお仕事をされているのですか?
西原:他の社員と業務は変わりません。ただし、私は午前中にトレーニングを行ってから出社し、その後午後のトレーニングも行うので時短勤務となっています。
現在私は、生産計画課に所属しており、データチェックの終わったデータを印刷するにあたり、どの工場にどのくらいの部数を印刷するのか、状況を見ながら振り分けていく仕事をしています。
とはいえ入社したばかりですので、今は研修を受けながら仕事を覚えるのに必死。先輩や上長のサポートを受けながら、少しずつできることを増やしている段階です。それでも、自分なりに工夫して印刷する用紙や版を節約できたときなどは嬉しくなります。
社員のみなさんは皆、優しい方ばかりです。
みなさん私が大会に出る時など、何も言わなくても「頑張ってね」と応援してくださいますし、大会後には「結果はどうだった?」と気にかけてもくださいます。
それに社長をはじめとして、社員全員が経営理念に沿って一丸となって動くところや、素早く決断を下して行動に移すところなど、大学時代のボート部を思い出します。競技者として結果を残すだけでなく、今は早く社員の皆さんの頼れる同僚となることも私の大切な目標です。
今までにない環境で、社会人アスリートとしての活動をスタート
―どのようなトレーニングメニューを行っていらっしゃるのですか?
現在は1週間のうち朝6回、午後5回の11回、トレーニングを行っています。朝は乗艇が主体、午後はウェイトやエルゴと呼ばれる機器を使ったトレーニングです。練習環境は琵琶湖の瀬田川で、ここの瀬田漕艇クラブの機器を使わせていただいています。この場所も、会社の方が見つけてくださいました。
私が大学時代に練習していたダム湖はとても小さく、ボートを漕ぐ距離が片道1500mしか取れませんでした。そのため、くるくると折り返しながらボートを漕ぐしかなかったのですが、瀬田川は全く違い、5kmをノンストップで漕ぐことができます。私は、他の選手と比べてフィジカルや心肺機能がそれほど強くないため、このノンストップで漕ぎ続けられる環境は、体力や技術の向上にうってつけなのです。
また、トレーニングにおいても大学時代のヘッドコーチと、かつて日本代表の指導に携わった瀬田漕艇クラブのクラブコーチのおふたりの指導を受けています。こうした環境や指導者も、私一人では決して見つけられず、また出会うこともできなかったと思っています。
2020年の夢とその先にあるもの
―2020年の東京オリンピックにむけて、またその先・競技者や社会人として西原さんが目指していく目標を教えてください。
西原:まずは確実に東京オリンピックの代表に選ばれることが目下最大の目標です。選考は2019年の11月から開始されますから今がまさに正念場です。
応援してくださる皆さんのためにも、今は少しでも身体を鍛えて、世界の舞台で自分のできる限りを出し尽くしたいと思っています。
また、ボートという競技においては、日本は競技者も少なく、技術的にも高い水準にはないのが現実です。欧州などのボート競技が盛んな国では、選手の技術も体格もまるで違います。それでも、少しでもそうした選手の中で、私の実力を示すことができれば、ボート競技に向けられる国内の目も変わるかもしれません。
まだまだ先のことですが、プリントパックで競技を通して実績を残すことができたのであれば、その後指導者として、プリントパックやボート文化に貢献してきたい。ボートの才能があるのに、私のように就職と競技の間で悩んでいる人がいれば手を差し伸べたいと思っています。そのうえで、会社にもメリットのある形でその才能を伸ばしていくことができればと考えています。
それからこれは競技とは関係ありませんが、プリントパックの社員として成長し、経営や戦略に関わる立場になりたいなとも考えています。
就職活動当時、悩みに悩んでいた私に手を差し伸べ、ものすごいスピードで問題を解決してくださった皆さんへのご恩に報いるためにも、仕事も競技も自分のできることをひとつひとつ、着実に的確に、地道に取り組んでいきたいと思います。